2021年3月28日
東京の今年の桜は、3月14日に開花宣言。昨年と同じ史上もっとも早く開花したとの報道でした。
一都三県の新型コロナの緊急事態宣言が21日に解除され、それに合わせるようにあちこちで桜が咲き誇っていました。
お花見は、毎年、通勤途中の道、公園、そして通勤電車から見える桜で楽しむくらいです。電車から見える桜も、もう何十年もの通勤ですから、いくつも場所を覚えています。
ある駅の近くの線路に面した民家の庭に、1本の桜の木がありました。その民家は小さな和風の平屋で、生け垣がきれいに整えられ、お庭も手入れされているようで、イメージとしてはツワブキやシランが植わっていそうな、落ち着いたつつましやかな生活感がありました。桜はポピュラーなソメイヨシノではなく、それほど高くない樹形が三角形に近く、日本画にしてもいいくらいの美しい姿です。毎年季節になると、もう咲いたかなと確認し、あっという間に通り過ぎてしまうその数秒の桜を楽しみに観ていました。その駅から徒歩でたぶん数分で行けそうな距離なので、そのうちその桜のところまでいって、近くで見てみようと思いながら、毎年毎年機会を逃してきたのでした。
そして、数年前、いつものようにもう咲いたかなと思って通勤電車の窓越しに探しましたが、見つかりません。見落としたのかしらと、次の日、よく目をこらして見てみましたが、咲いているはずの時期なのに、桜は眼に入りませんでした。
次の日、もう一度よく探してみると、その桜のあった民家はなくなっていて、新しい2階建てのお菓子の家のような建物が敷地いっぱいに建てられ、桜の木はなくなっていたのでした。すっかり様子が変わってしまったので、桜の場所を探すことができなかったのだとわかりました。
好きな人に好きだと告白できないまま、もう逢えなくなってしまったような気持ちがしました。
先週仕事で出かけた先の道で桜を見つけたので、写真を撮りました。東京駅から百貨店の高島屋に行く途中の桜の街路樹です。桜のトンネルになっていました。
今日はあいにくの曇り空でときおり雨がぱらぱらふる不安定な陽気。自宅の近所の桜は散り始めていました。小学生の女の子たちが桜の花びらを「わーっ、きれい、きれい」と言いながら追いかけていました。開き初めの頃は風にまだ寒さが残っていても、満開を経て散り始める頃には、風を冷たくは感じないほどに春がすすんだことに気づきます。
すべての子どもたちが、楽しい新学期を迎えられますように。
石川順子