2021年4月13日
今日は、昼ごろに家を出た。曇りのち雨の予報だが、まだ太陽の暖かな光が降り注いでいた。駅に向かって少し急ぎ足で進むと、前の方に交通安全の黄色いカバーの掛かった真新しいランドセルが動いているのが眼に入った。ランドセルの下からかわいらしい足が出ている。横からは手が出ている。そして、トコトコと歩いている。えっ? 一年生にしてはちっちゃすぎる。
ランドセルの右側から伸びた手の先は、黄色い通学帽をかぶったお兄ちゃんの左手につながっている。お兄ちゃんの右手は、お母さんの左手とつながっている。ちっちゃい手足は2歳半くらいの女の子のものだった。きっと、小学校に入学して通学し始めたお兄ちゃんの新しいランドセルがうらやましくて、しょわせてもらったのだろう。ねぇねぇとおねだりするようすが思い浮かぶ。
子どもは、大人や兄姉の様子をよく観察している。兄が入学を楽しみにしてランドセルをしょって歩き回ったり、中に何かをいれたり出したりしている。親はそれを見て喜んでいる。ランドセルには何かいいことがあるに違いないと直感したのだろう。
ゆっくり歩いている親子の横を足早にとおりすぎながら、女の子の様子をうかがう。兄のランドセルをしょった女の子は、ちょっとお姉さんになったような気分に見えた。
何気なく見上げると、カラスが一羽、輪を描いてゆっくり空を舞っているのが見えた。港などでよくトンビがそうしているように、上昇気流をつかまえて上へ上へと上がっている。と思ったら、小さな2羽の鳥も同じように、しかし少し速いスピードで輪を描いて飛んでいる。あ、ツバメだ。遠い東南アジアの国々から海を渡って、ツバメがやってきていた。今年も、どこかの家の軒先に巣を作って卵を産み、日本で子育てをするのだな。ミャンマーから来るツバメもいるのだろうか。
こんな春のひとときに、平和な日常の幸せを感じる。争いのない、ごく当たり前の日常が戻りますように。
真新しいランドセルから手足はえ一年生の兄と手つなぐ
石川順子