2020.1.5
こんにちは
約1年前から、アマゾンプライムビデオの鑑賞にはまっています。自宅でタブレットにダウンロードして、通勤電車内で楽しんでいます。これまでに観た映画、テレビドラマ、アニメは、合計で100を超えました。
最近観た中で、これはちょっと、と思ったことがありました。
2011年にフジテレビで放送された「チームバチスタ3 アリアドネの弾丸」というテレビドラマのワンシーンです。このドラマは死因不明社会の問題にからめた医療ミステリーで、犯罪や医療過誤による死亡が病死として処理されてしまうことがあるという問題を世の中に知らせるという意味でとても意義があり、また、犯人が誰なのか、視聴者の予想を裏切るしかけが結構面白く、とても楽しめました。
が、最終回の、弁護士の事務所を主人公が訪ねるシーンで、まず画面に映し出されたのが、「弁護士試験合格証」というものでした。「えっ?」そのシーンは、わずか1秒か2秒でしたが、そこはビデオ、戻してそのシーンを止め、よく見てみると、縦長の表彰状のような用紙に、「弁護士試験合格証」と表題があって、弁護士の氏名、生年月日があり、「弁護士法(昭和24年法律205号)による弁護士試験に合格したことを証明する。総理大臣○○○○ 東京都知事○○○○」と書かれていました。
弁護士法が昭和24年法律205号であることは間違いありません。しかし、弁護士法には「弁護士試験」というものは存在しません。また、弁護士であることを総理大臣も東京都知事も証明する立場にありません。このドラマは法律監修を受けていないのかしらと思い、エンドロールをチェックしましたら、ある法律事務所が法律監修をしていることがわかりました。しかし、撮影セットの壁に貼る合格証明書までは相談されなかったのでしょう。そんなところまでドラマを観る人の記憶には残らないでしょうから、制作者は法律監修を受けるようなたいしたことではないと思われたのでしょうか。あるいは、何か深い意図が???
ただ、日本では、弁護士は、総理大臣や東京都知事という「行政」の長に証明してもらう立場ではないということで、弁護士であることの証明について、このブログで取り上げさせていただくことにしました。
弁護士になるためには、法務省が行う司法試験に合格する必要があります。裁判官、検察官になりたい人も同じです。法務省は、三権分立の機関のうちの行政に含まれますね。合格すると、次に最高裁判所が設置する司法研修所に入所して司法修習生として勉強します。司法研修所の卒業試験(いわゆる2回試験)に合格すると、司法修習を終了したことを証明する証書を最高裁判所が発行します。最高裁判所は、三権のうちの司法の最高機関ですね。これで、「法曹資格」を取得し、弁護士になる資格を得たことになります。
しかし、それだけでは弁護士になれません。入会したい弁護士会(東京都には3つ、北海道は地域別に4つ、それ以外の府県には各1つあります)を選び、その弁護士会(単位会)を通じて日本弁護士連合会(日弁連)に弁護士登録を請求し、日弁連に備えた「弁護士名簿」に登録されることによって弁護士となり、単位会に入会してようやく弁護士として職務を行うことができます(弁護士法8・9条)。登録に審査はありますが、試験はありません。私は、東京弁護士会を通じて日弁連に登録申請をし、登録が認められて東京弁護士会に入会しました。弁護士登録に関して総理大臣も東京都知事も何ら関与していません。弁護士の登録に関することは、行政機関から独立した「日本弁護士連合会」という弁護士全員で構成される会が役割を果たしているのです。行政から独立しているからこそ、国を相手にする事件でも、依頼者の方のために代理人として、自由で独立した役割を担えるのです。
「弁護士試験」というものがないので合格証というものも存在しませんし、事務所に何らかの証明証を掲げておかなければならない決まりもありません。あるのは、弁護士バッチ(裏に自分の登録番号が記されています)を携帯する決まりです。バッチの代わりに日弁連にカード型の身分証明書を発行してもらい、それを携帯することもできます。
というわけで、当事務所にお越しになったときに「弁護士試験合格証」が掲げられていなくても、あやしまないでくださいね。
石川順子