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新型コロナウイルス感染症 感染症法罰則規定は反対

2021年1月27日

今、国会では、新型コロナウイルス感染症の患者・感染者が入院措置に反したり、積極的疫学調査・検査を拒否したり、虚偽の内容を答えたりした場合に処罰する規定を設けるという感染症法の改正について議論しています。懲役や罰金など、処罰の対象と規定された行為を行えば犯罪者となり前科がつくことになります。

私は医療問題弁護団に所属しています。医療問題弁護団は、患者側の立場で医療問題に取り組む東京およびその周辺の弁護士による任意団体です。この1月20日、医療問題弁護団は、感染症法の改正に強く反対する意見書を内閣総理大臣、厚生労働大臣、各政党に対して提出をしました。

新型コロナウイルスは、感染力が強く、また、変異型の市中感染も始まっている現在、誰がかかってもおかしくない状態です。確かに、人に感染させる可能性のある期間に出歩くことは好ましくありません。しかし、症状が出るより2日前から人に感染させる力がある新型コロナウイルスの場合、診断前に感染させている場合も少なくないと考えられ、感染した自覚のある人が出歩かないようにする目的で罰則で脅すことに、感染防止効果がどれほどあるのか疑問といわざるを得ません。また、あまりにも安直です。

感染したという自覚がありながら外出をする動機にはどんなものがあるのでしょう。

感染したって風邪のようなもので気にしないという誤った理解をしている人には、とにかく正しい情報を届けること。最近、政府の分科会の尾身会長が若い人たちに呼びかけをしたとのことです。若い人に届く方法を、若い人から教えてもらってどんどんやっていただきたいです。また、感染を経験し、若い人が耳を傾けるような人(スポーツ選手やタレントの方たち)から、生の声で発信して欲しいです。

本当は行きたくないのだが、職場の先輩に誘われて断り切れずに数人の飲み会に参加してしまった。その数日後ちょっと喉に違和感が。。。検査を受けて陽性になり入院を勧められ、拒否すると罰金になることまで想像。。。「いやいやこれは単なる風邪に違いない」と思いたくなる。。。感染が発見されにくくなり、むしろ感染が拡大する方向になってしまいます。罰則は、感染防止には逆効果であると思います。

また、疫学調査については、まず、プライバシーの保護の徹底。そして、個別の症例から感染リスクを洗い出す。いいよどむ感染者には、親身になって事情を聴きだす。「あなたのその体験からの教訓が皆さんに必要なのです。プライバシーは絶対に守ります。」と、感染者によく説明して理解と協力をいただく。こうして、感染リスク回避方法の共有化に生かすことができるのではないでしょうか。罰則で脅しつけてくる保健所職員に協力しようと思うでしょうか。罰則では協力は得られません。丁寧な聴き取りができるよう保健所の体制を強化してマンパワーをアップしていただきたいです。

罰則で犯罪者を作り出せば、偏見や差別が生まれます。全国の知事さんから、罰則を設けて欲しいという要望が寄せられているから罰則を作るという答弁がありました。知事さんが要求していることは立法事実(法律をつくることが必要であることを根拠づける事実)になりません。

そんなことで感染を減少させようとするのではなく、感染した人の気持ちを推し量り、出歩いたり嘘をついたりしようとする気にならないようにすることが必要でしょう。誰でも感染するリスクがあるという意識を共有して、日本に住むすべての人が感染防止対策をとることができる環境を整えること(病床の確保、休業の補償など)で感染を抑えてほしいと思います。

一日も早く、新型コロナウイルス感染が収束することを祈っております。

皆様も、どうぞご自愛ください。

 友人が作ってくれたマスクです。

石川順子