1 変わりゆく「人類の進化」に関する学説
みなさんは「人類の進化」について、どのように習いましたか?
私が小学校の頃は、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどの各地域で猿人や原人(例えばアジアでは「北京原人」)を祖先として、各地域で新人(私たちホモ・サピエンス)に進化した、と学びました(「他地域進化説」)。

この図のように、まさに「サルからヒトへ」一直線の進化でした。
その後、大学の授業では「新たな有力説」として、アフリカで私たちの共通の祖先が誕生し、その後世界中に広がったと学びました(「単一起源説」)。
先住の旧人類(ネアンデルタール人など)が絶滅する一方で、私たちだけが世界中で繫栄したということでした。
2 なぜ私たちだけが繁栄したのか
当時の「新たな有力説」で最大の謎は、「なぜ私たちホモ・サピエンスだけが生き残った(他の人類は絶滅した)のか」でした。
いくつかの仮説はあったものの、定説は「ホモ・サピエンスは各地で先住の人類と闘争し、勝利した(滅ぼした)」という説でした。
まるで私たちの祖先は、弱肉強食の本能をむき出しに、世界各地で闘争と征服の悲劇を繰り返した末に生き残ったようで、なんとも後味の悪い話でした。
3 定説を覆す「最新の学説」
ところがここ数年、化石人骨のゲノム解析やDNA分析技術の飛躍的な発展によって、このような定説が覆る発見が相次いでいます。
私たち現代人のDNAの中に、先住の人類と一致する遺伝子的特徴が複雑に組み込まれていることが分かり、その経緯を科学的に推論した結果、以下の仮説が有力となりつつあります。
アフリカで誕生した私たちの祖先は、世界中に移動・拡散するうちに、各地で先住の人類との交雑(混血)を繰り返しながら、各地で融和的・平和的に繁栄していったらしい、というのです。
混血によって先住の人類が既に持っていた免疫システムや特有の気候風土への適応力も獲得したことで、その土地で生き抜く防御法をも身につけたのです。
とりわけ私たちの祖先は、コミュニケーション能力や集団行動が得意だったため、結果的に「唯一の人類」として現代に生き残ったと考えられています。
つまり、ネアンデルタール人やデニソワ人などの先住人類は、闘争の末に絶滅させられたのではなく、そのバトンを受け継いだ私たちのDNAの中に生き続けているのだそうです。
もしも私たちの祖先が、移住先で先住の人類に闘争を挑んでいれば、双方とも滅んでしまったり、たとえ勝ち残ってもその土地特有の伝染病や気候風土に適合できずに死に絶えてしまったりしたかもしれません。
私たちの祖先は、それよりも融和的・平和的に共存する道を選択した結果、現在の繁栄がもたらされたというのです。
4 人類の進化から学ぶこと
先住の人類のバトンを受け継ぎ、「唯一の人類」として生き残った私たちですが、食料や資源、エネルギーの獲得をめぐって、残念ながら今も世界中で戦争が繰り返されています。
世界中に広がりながら、移住先の先住の人々と融和的・平和的共存の道を選択した私たちの祖先の伝統は、現代では十分に活かされていません。
高いコミュニケーション能力や集団行動の適性を持ちながら、私たちの世界では、融和的・平和的な解決よりも力による支配が横行しています。
人類の進化の研究成果を学んで更なる繁栄をもたらすのか、それともこのまま戦争を続けて人類滅亡の危機を迎えてしまうのか。
先住の人々のバトンを受け継いで生き残った「唯一の人類」である私たちの責任は重大です。
力による支配から、法に従って融和的・平和的な解決ができる社会の実現を願ってやみません。

